さて、スキマを抜けたと思って一同が目を開けた、その視界にあったものは、実に見慣れたそれだった。
テーブルの上に掛けられた赤いそれは、先ほどまで夕食を食べていたスピードシートの席そのもの。
あたりを見渡せば、多少の上手く言い表せない違和感は感じるものの、そこはまさしく今までもいた場所だった。
「…あれ?ここ、食堂か?」
神薙が、そう声を上げる。確かにそうだろう。意味不明なものに吸われたと思ったらこれだ。
次に目を丸くして同意したのは、甲府だった。辺りをきょろきょろと見渡して、先ほどまでとあまり変わらない周囲の風景を確認している。
「ほんとだ…。でも、あれ?」
「俺らって、スキマ送りにされたんじゃなかったっけ?」
「スキマ送りって…」
本村が、全員の疑問を代弁した。松岡が力なく突っ込みを入れるものの、まぁ、確かにそうとしか言いようがないのだ。
「それにしても、外明るいな…。そうか!」
何かわかった風に声を上げた茂沼に、全員が(全く)期待の(こもっていない)目で見た。
「時間が戻ったんだな!?」
…
……
………………
「まてまて、時間が戻ったなら人がゴミのように居るはずだぞ」
「ゴミのようにって、ムスカ!?」
「や、朝だったら人いないじゃん」
「朝でもいるよ~?人少ないけど」
「え、ちょっと、スルー!?」
松岡の突っ込みはまたも華麗に却下され、一同は何故こんな時間にこの場所にと考え込む。
そもそも、食堂のおばちゃん達もいないという事実がおかしい。
松岡は少々落ち込んでいるものの、それこそここはスルーし「するなよ…」……。スルーして、辺りを全員が注意深く見渡した。
そこでふと、倉真があることに気づき、指をさして茂沼を見た。
「シゲ、あそこの注意書きんとこよく読んでみ」
「ん?何かあった?」
言われたとおりに読んでみようと茂沼が近くまで行ってよく見ると、そこには、あり得ない文字が並んでいた。
そして、茂沼はあまりに予想外の方向からの攻撃に固まる。
「え?どうしたの?」
「何か、面白いものでもあったか?」
「なに~?」
「……何か、やな予感するなぁ…」
全員が、さまざまな期待を載せて茂沼を見る。
「……なぁ、これって、俺らが考えた注意書きじゃない?」
注意書きにあったのは、
『食堂では集団でトイレに駆け込まないでください』
という文字。
その文字を見て一同が固まるものの、それすぐに違う方向からの叫びによって解除された。
「うわあぁぁ、やべぇ!」
「どした?うわ、やべぇわ」
その叫びの元は、一本の柱。いつもそこには、生協からのお知らせなどが貼ってあったりするのだが…。
今、そこには、
『ゆっくりしていってね!!』
という文字と、イラストが、存在していた……。
予想以上に長くなってしまったので、イントロダクションはここでいったん切ります。
さて、ここは一体どこなのか…!?
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